Photoレポート(3):修理後360度PhotoVR撮影及び3次元計測


平成26年2月15日午後3時。大雪の降った日でした。日本通運の横浜倉庫に360度PhotoVR撮影用の大型回転撮影装置AutoQTVR AZRotator120が運び込まれました。

手前の円形のテーブルがAZRotator120です。このテーブルに重さ約400kgの仁王像を載せて回転撮影を行います。

高徳院の仮設作業場からは既に修理の終わった仁王像が運びこまれていました。厳重に養生が施されています。

回転撮影の準備と併行して御像の組み立てが始まりました。

これは御像の修理にあたって新しく作られた方座です。この方座のほぞ穴に新補した御像の脚柄が差し込まれます。

この黒漆塗りの方座は楠材で新補されたもので、これだけでも200kgはあるといわれた。

御像を立たせるためには、ウインチのついた組み立て式作業枠の中に寝かせられます。

それからウインチを使い、上半身から徐々に持ち上げます。

下半身から突き出た脚柄が床にあたらないように慎重にウインチ作業が続きます。

漸く全身が宙に浮きました。

そこで御像の下に方座を滑り込ませます。

御像の脚柄と方座のほぞ穴の位置と角度を慎重に調整します。

ここで少しでも狂いがあると脚柄を傷めることになります。

少しづつ慎重に脚柄をほぞ穴に差し込んでゆきます。

脚先の養生を取り除いて脚底と方座表面の接触状態を確認します。

御像はどうやら正常に方座に固定されたようです。

次は、方座に固定された御像を回転テーブルに載せる番です。

ここでは合板に載せられた御像をジャッキを使って持ち上げ、幾つかの枕木を間に差し込んで回転テーブルと同じ高さにもってゆきます。方座と合板の間にはあらかじめフローリング材が2枚、レールのように差し込まれています。

御像全体を回転テーブルに近づけてゆきます。

テーブルと方座の高さを慎重に調整します。

回転テーブルにはもう一組のフローリング材がしかけられ、その上に御像を押し込んでゆきます。水平方向の抵抗が少ないためにあの400kgの巨体は、意外に楽々とテーブルの上を滑ってゆきます。

一旦載せた後は、簡単には手で移動できないため、御像の回転中心がテーブルの中心にくるように位置調整します。

御像の位置が決まったところでテーブルからはみ出た方座の四隅をジャッキで支え、フローリング材を抜き取きとります。

この段階で養生がはずされてゆきます。

頭部を残して胴体、脚部の順にはずしてゆきます。

御顔が現れました。

最後は右の手先でした。

修理後の阿形像の全体像です。

あらかじめ背後の壁に用意されていた背景紙が降ろされ、撮影の体制にはいりました。

ファインダーを覗くとこんな形になります。

順番としては少し先に跳びますが、これは阿形像の撮影が終わり、吽形像と入れ替えようとする場面です。先ほどとは逆の順番で阿形像をテーブルから降ろします。

撮影の終わった阿形像は既に倉庫の片側に仮置きされ、吽形像が作業枠の中で出番をまっています。

前と同じように回転テーブルまで運ばれてゆきます。

テーブルと方座の高さを調整し、

同じようにフローリング材を使って回転テーブルの中心に滑り込ませます。

養生がはずされてゆきます。

修理後の吽形像です。

見違えるような仕上がりです。

撮影の準備です。

照明がセットされ、モデリングランプでのカメラの調整です。撮影は水平回転だけですので、カメラは三脚に固定されます。

準備が終わり、パソコンの制御ソフトの側から撮影開始のボタンが押されます。

撮影は5度回転するごとにシャッターがきられ、ストロボが発光し、データがパソコンに転送されます。

撮影は一回転約4分でおわり、結果は、直ちに像の動きで確認されます。回転の滑らかさや明るさ、ピントに問題がなければ撮影終了です。

360度PhotoVR撮影の次は、そのまま3次元計測に入ります。今度は寝かされたままの修理前とは違い、御像が回転してくれるので3眼赤外線カメラを移動する必要はありませんでした。

今回は、天衣の計測も実施できました。

計測後、部分的にデータの欠落などがないかを点検し、問題がなければ終了です。今回は、かなり質のよいデータが取れたようです。